“黒川塾 (三十一) ”日本のゲームが海外に進出しない理由を外国人4人が分析! クラウドファンディングの“夢”も語られたトークをお届け

文・取材・撮影:ライターヒナタカ
●日本の会社は個人の能力を潰してしまう?
おなじみ黒川文雄氏による“黒川塾 (三十一) ”が、デジタルハリウッド大学大学院 駿河台キャンパスにて、2015年12月11日に開催された。
今回のテーマは“エンタメ業界・Youは日本で何している?”で、日本のゲーム業界で働く4人の外国人が、日本のゲーム産業の現状などを語る内容となった。
コチョール・オザン氏……Wargaming.netアジア太平洋地域所属。
日本のゲーム業界のスペシャリストが集まるイベント“Insert Coin!”を展開中。
ハンサリ・ギオーム氏……ゲーム開発会社Wizcorp代表取締役。
日本国内だけでなく北米、ヨーロッパなどの会社と共同し、多くのゲームやwebアプリケーションを開発、成功に導く。
ベン・ジャッド氏……DDMジャパン代表。
カプコンを経て、ゲーム業界をリードするエージェントとして、クライアントとのさまざまなプロジェクトをサポートしている。
マイケル・ヘリング氏……ユニティ・テクノロジーズ・ジャパンにて、コンソールR&Dサポートエンジニア開発業務を担当。
おもにコンソール開発業務を担当、カーネギーメロン大学・大阪キャンパスではリズムゲームを製作した。
以下より、登壇ゲストによるトークの内容を紹介しょう。
■日本のゲームがなかなか海外に進出していかない理由とは?
日本のゲームが海外に進出しないことについて、ジャッド氏はクリエイターが海外ファンへ耳を傾けていないことが理由のひとつであると主張。
たとえば『ヒットラーの復活』(海外名:『Bionic Commando』)は日本ではあまり売れなかったが、海外ではとても人気があり、ファンはなぜリメイクを作らないのかとずっと口にしていたのだそうだ。
ジャッド氏によると、日本人には“石橋を叩いて渡る”国民性があり、キャンペーンをきっちりと考えないと、なかなかプロジェクトに着手しないという傾向があるという。
一方、近年盛んになっているクラウドファンディングは“とりあえず”の着手ができるため、フロンティアスピリットに溢れている手段として有効であるのだそうだ。
なお、ジャッド氏はエージェントとして活動しており、コンテンツのアプローチ方法に関わる情報を持っているとのこと。
いまの時代は情報が強い武器になるため、海外展開のためにクリエイターは自身のところに相談に来て欲しいとも語っていた。
ギオーム氏は、日本のゲームがなかなかグローバル化しないことについて、(1)国内で十分に儲かっていること、(2)ルールがはっきりしていること、のふたつを挙げた。
このルールとは、会社での組織力に基づくものだそうだ。
日本では会社の集団としての力を鍛えてルールを学んでいるが、海外ではそのルールははっきりしておらず、個人の能力を重視しているようになっているとのことだ。
また、日本の会社は個人のポテンシャルを伸ばすようになっていない、もっと言えば会社が個人の能力を潰してしまうという状況になっているのだという。
ギオーム氏は、日本では一度会社に入ると、2~3年でその色に染まってしまうということも、日本のクリエイターがグローバル化することを阻害しているのではないかと語った。
ヘリング氏によると、日本のコンテンツ製作において、まずお金を意識しているのがいいセンスであるとは思えないとのこと。
クラウドファンディングなどで大成功している例を参考に、ゲーム開発におけるさまざまな過程を理解するほうが重要なのだという。
●クラウドファンディングは夢をサポートするもの
オザン氏は、日本でクラウドファンディングがあまり浸透していないのは、慈善団体などへの寄付に比べ、エンターテインメントへの出資ということへの抵抗感が理由ではないかと語った。
また、クラウドファンディングの多くは記名性であり、日本人がそうした自己アピールもしない傾向があることにもミスマッチがあるのだそうだ。
ジャッド氏はこのオザン氏の意見に対して、エンターテインメントのクラウドファンディングは夢をサポートするものであり、そうした意識が日本にあまりないことが残念であると語った。
ジャッド氏は、クラウドファンディングでサポートがなければゲームが発売されない、夢が実現できないということを、エンターテインメントのファンに理解して欲しいという願いがあるそうだ。
■日本のソフトウェア産業の現状とは
ギオーム氏は、日本のソフトウェアのエンジニアリングが産業としてもはや壊れていると語った。
日本は大手の会社のシステムに固執し、社員は“苦しい”、“帰れない”、“給料低い”という“3K”の状況にあり、仕事としてもおもしろくもない、という状態になっているのだそうだ。
それは日本の会社で権限を持っている人が、エンジニアリングを分かっていないことも原因なのだという。
ギオーム氏はその証拠として、日本のソフトウェアが海外で成功しているものがほとんどないという現状を挙げた。
ジャッド氏はこのギオーム氏の意見を受けて、日本のゲーム産業が縮小していることに危機感を覚える一方、それでも日本から自分の好きなゲームが出てきてほしいと願っていると語った。
また、ヘリング氏は日本での生活において、日本のエンジニアが作ったツールに満足できているとのこと。
日本のエンジニアによるソフトウェアは優れてはいるが、なかなかグローバルには展開していかないようだ。
■日本のクリエイターに必要なこと
“クラウドファンディングの成功やコンテンツのグローバル化において、日本のクリエイターがやっていないこととは何か”という質問に対し、オザン氏は“オープンな性格”と“受け入れる姿勢”を、ギオーム氏は“失敗を恐れないこと”を挙げた。
登壇ゲスト全員が、日本人はなかなか恥ずかしいことや失敗を恐れてチャレンジできない、完璧主義すぎることを少し残念に思っているようだ。
登壇ゲストそれぞれが、日本を尊敬する理由を語る一幕も。
治安の良さ、他者を尊敬する文化、真面目で責任感の強い人間性、ファースト・フード店や清掃などの仕事にも誇りを誇っている国民性などが挙がっていた。
海外では、空港の清掃などでは仕事へのやる気のなさが見て取れていやな気持ちになるが、日本ではそうしたことが一切ないのだという。
また、ジャッド氏がゲーム業界に入ったのは、6歳のころに両親が離婚し、お母さんとのふたり暮らしで孤独な日々を過ごしていたとき、ファミコンという友だち代わりのものがあったことが最初のきっかけなのだという。
ジャッド氏は青年時代もゲームのおかげで楽しく過ごせていたこと、ゲームがエンターテインメントの一種として素晴らしいものであることを感じて、ゲームに何かを恩を返したいと考えていたそうだ。
ジャッド氏は、「ゲームで、孤独感を感じている子どもに幸せを感じてほしい」と語った。