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「サマーレッスン」プロデューサー玉置絢氏インタビュー

 【23//2017】

「サマーレッスン」プロデューサー玉置絢氏インタビュー


Taipei Game Show 2017で、他の地域に先駆けて繁体中文版が公開された「サマーレッスン」。
日本でもっともヒットしたPlayStation VRタイトルとして台湾でも非常に注目度の高いタイトルだ。
今回は、ステージイベント(参考記事)を終えた直後の玉置絢氏にメディアインタビューに参加することができた。
台湾のゲームファンは「サマーレッスン」のどこに注目しているのか、一方で、玉置プロデューサーは、日本での発売を経て何を感じたのか、アジア展開をどのように考えているのかについて知ることのできる貴重な機会となったので、「サマーレッスン」ファンはぜひ最後までご一読いただきたい。


■玉置氏「本当にそこに存在しているとしか思えないという感覚は譲れない」
――VRゲームとして「サマーレッスン」のコンセプトを改めて教えてください。

玉置氏:実は 「サマーレッスン」は急に作ろうと思ったわけではなく、VRという技術が出てきたときに、バンダイナムコはどういうことができるんだろうというところからスタートしたプロジェクトです。
そのときに、なぜキャラクターと近くで触れ合えるゲームを選んだのかという理由は3つあります。

1つは凄く単純で他社に先駆けて、本当に目の前にあるようなオブジェクトを作ると、それが本当にそこに存在しているとしか思えない感覚があるんだということを発見したということ。
2つ目は「鉄拳」シリーズや「ソウルキャリバー」シリーズなどで3Dのキャラクターの表現ですね。
それは顔の表情や体の動きといったところのシステムやノウハウがバンダイナムコにはたまっていて、そのスキルを使えば凄いゲームができるのではないかと思ったこと。
3つ目はVRが凄い技術で世の中の話題になることは3年前には予測ができていたので、その中で北米や欧州の大手メーカーがパノラマの体験だったり、激しいアクションだったりの刺激的なゲームをハリウッドテイストで提供するのではという予測を立てていました。
それに対して日本のゲームメーカーがどういう形でVRに関わっていって作って行くかというのが大きな課題でした。

そのときに日本だけでなくアジアの我々の共通するところとして、とにかくキャラクターが大好きですよね。
ただの体験だけでなく、ただの登場人物だけでなくて、そのキャラクターを人物として好きになる気持ちを持っているということがひとつの着眼点です。
つまり、実際の市場として可能性があるだけでなく、長い間お客様に愛していただくVRコンテンツにするためには、キャラクターがいないよりいたほうがいいということで、こういう形の「サマーレッスン」を考えました。

――プレーヤーの選択によってストーリーが変わるのですか?
玉置氏: はい、現時点でエンディングの分岐があります。
どういう風にして育てたのか、先生としての能力だったり、教え方によって成績が変わることでひかりちゃんの反応がどんどん変わっていきます。
ですから、家庭教師として頑張ってプレイしましょうというところがひとつのポイントとしてあります。
ただ、「サマーレッスン」はただのゲームではなく、VR体験を主眼に置いているので、真にリアルなVRの世界を想像すると、プレーヤーがある行動を起こしたときに、ひかりちゃんがどういう行動を起こすのかは1つあればいいわけではなくて、プレーヤーの動きに合わせて様々な反応をすべきだと考えました。
ですので、ひとつのシチュエーションの中でも、プレーヤーの行動によって、ひかりちゃんの話や表情が変わる幅の広さがひとつの楽しみになっています。

――アリソンについての新しい情報はありますか?
玉置氏:今のところ、新しい情報はないですが、「サマーレッスン」自体は2017年も引き続き展開していきます。
お客さまの要望を踏まえて開発・配信をしておりますので、そういう要望が大きければ展開もあるかもしれません。

――ローカライズについて、台湾・香港向けの中文版について何か独自の要素の追加は考えていますか?
玉置氏: 今のところ、どの国の文化というより、まずはVRとしてキャラクターが近い距離にいるときの驚きや、VRならではの楽しさをフィーチャーしていこうと考えています
――新しいキャラクターの追加の予定は?
玉置氏: 今はひかりちゃんのシチュエーションを足すことをやっていて、皆さんのご意見を伺いながら開発・運営をやっていますので、色んなご要望をいただければと思います。
今から「サマーレッスン」をアジアの皆様にご提供する上で、「サマーレッスン」の魅力の根っこの部分であるキャラクターとのキャラとの出会いの体験や、VRってこういうものなんだというひとつのスタンダードとして、まず「サマーレッスン」を楽しんで頂くということに基点にして考えています。
配信後にどう感じられたかというフィードバックをもとに、今後の展開を決めて行こうと考えています。

――「サマーレッスン」ということですが、今後「スプリングレッスン」や「ウィンターレッスン」は作るのですか?
玉置氏: そうですね、今のところその予定はありません(笑) 。
なぜ夏にしたかというと、やっぱりモノの色が明るいので、綺麗な時期なので、VRで見ても色んな体験がし易いということがまずひとつあります。
雰囲気的にもさわやかな感じがして、VRという新しいものとのマッチングが良いということで夏にしました。

――ダウンロードコンテンツの展開については?
玉置氏:いまどのような形で提供するのがベストかを考えているところです。
というのは、特に台湾の皆さん、日本の「サマーレッスン」の展開に詳しい方が多くて、どのようなものが存在するのか、結構な方がご存じというのが前提としてあります。
ですから、日本と同じと断言するわけではなくて、ベストな形を探しているところです。

――アジア向けのコンテンツの追加の可能性は?
玉置氏: うーん、今のところは未定ですね。

――トレーラーでひかりちゃんと出かけるシーンで、街を行く人を見かけませんでしたが、「サマーレッスン」ではその他のキャラクターは描かれないのですか?
玉置氏:実際に考えたことはあります。
なんですけど、ひかりちゃんと一緒に会話をしていて、どういう風に接して、対話をしようと考えているときにあまり他の人がいると集中できないんですね。
「サマーレッスン」というのは世の中の社会を表現するVRというところにポイントは置きませんでした。
それよりもひとりの女の子をひとりの人間として、VRで出会ってその子を人間として扱いながら一緒に過ごせるかというところに主眼を置きました。
もちろんゲーム内に複数の人間を登場させることは技術的には可能なんですけど、そうすると自然と1人のキャラクターに対する集中がなくなってしまうので、「この子は人間なのかな?」という疑問を打ち破って、「この子はいるんだ!」とお客さんに確信させるところまでいかない危険性があるので、それよりも皆さんすべての人が、本当に目の前に人間がいるとしか思えないという感覚を研ぎ澄ますことに集中しました。

――バンダイナムコのIPを使ったコラボレーションの可能性はないのですか?おもしろいと思うのですが。

玉置氏:一番最初の時に「鉄拳」と絡ませようかという話もあったんですけど、でもバンダイナムコの提供するまったく新しい体験という意味で言ったときに、すでに皆さんがご存じで魅力がわかっているものと一緒にしてしまうと、VRは研究するなかで、どこが凄くて褒められているのかわかりにくくなってしまうので、「サマーレッスン」はこれだけで独立させようと言うことで今のような形になっています。
でも、「サマーレッスン」の中には「鉄拳」をはじめとしたバンダイナムコタイトルのノウハウは沢山活かされていて、ちょっと「鉄拳」キャラクターの面影を感じてもらったり、話の展開や作り方に、バンダイナムコらしさを感じて貰えると嬉しいです。

原田氏:そもそも「サマーレッスン」は「鉄拳」キャラはVRをやろうとして失敗したところから始まったからね(笑)。

玉置氏:ああ、その話もおもしろいですよね。
一番最初はひかりちゃんを作ったわけじゃなくて、「鉄拳」キャラクターをVR上で出したんですよ。
ブライアンを座らせてお茶を飲ませるというもので、そのときはVRの再現能力、表現能力が凄すぎることを考えていなかったのが誤算で、本当にムキムキの筋肉だったりとか、戦闘意欲むき出しの顔を間近で見ると、一般人は恐くて立ちすくんじゃうんですね。
それを見たときにもっと一緒に長い間過ごせるキャラクターがいいなということでひかりちゃんができました。

――今後、リアルなランドマークをゲーム内に登場させる予定はありますか?
玉置氏:そもそも台湾をはじめとしたアジア地域で、DLCという形で出すかどうかは未定です。
かつ今後の舞台も、VRで見てもっとも見栄えの良い、体験として素晴らしいと感じるレイアウトを優先しています。
現実世界をモデルにすると、VRの中で見たときに、必ずしもベストなレイアウトというと必ずしもそうではないんですね。
どうしても厳密に再現するためにコストをかけてしまうとそのほかがおろそかになるので、「サマーレッスン」の魅力はどこまでいってもキャラクターとその存在感だと思いますので、そちらを選択したということです。

――今後、家庭教師と生徒の立場が逆転するような展開はありますか?
玉置氏:ひかりちゃんが教えられることは何かということを考えなければいけないですけど(笑)、そもそも他のキャラをやるかも決まっていませんが、基本的にはこちらが教えるというところをメインにしようと思っています。
プレーヤーとキャラクターが一緒に何かの目的に向かって頑張っていく、うまくいったりいかなかったりするという苦楽を共にするという体験が、VRでキャラクターとの絆を深めていくという点で最適な構造だと考えています。

逆にキャラクターからプレーヤーを教わると、教わる側のプレーヤーが重荷になったりして、うまくキャラクターの期待に応えなきゃという心理になってしまって心から楽しめない人も出てくるのではないかと思い、こちらから教えて助けてあげるという形にしました。
でも、先生に褒められたり、元気づけられたりするのは、教えられる側でも嬉しいですよね。
そういう風な形でキャラクターに元気づけられる、自分がキャラクターから元気をもらったなという体験は可能性があると思います。
こういったご意見をいただくことで、お客様がVRに何を求めているかがはっきりわかってくるので、今後ともご意見をいただければと思います。

――玉置さんのお気に入りのシーンは?
玉置氏: それでいうとまあ全部です(笑)。
どれもかなり考え抜いて作ったので1つ選ぶのは難しいのですが、強いて言うとイヤホンを片方ずつ使って一緒に聞くというシーンは、凄く青春の香りもするし、キャラクターの近さも感じるし、好きですね。
もうひとつ、特に最近、チームのみんなでこれは凄いねといっていたのは、腹筋を手伝ってあげるというシチュエーションがあるんですが、そのときにプレーヤーは実際にひかりちゃんの足を押さえているような絵になっているが、誰かに手伝って貰って手を出してもらってその手をひかりちゃんの足だと思って掴みながらそのシーンをやると本当に腹筋を手伝ってあげている気持ちになります。
仲良くなって一緒にエクササイズをしているような気持ちになる。
友達に手伝ってもらってやってみてください。

――日本語版と中文版で一番大きな変化は字幕がついたことだと思います。
「サマーレッスン」の字幕はかなり目線に近い位置にありますが、何故あの位置なのかということと、今後吹き替え版の可能性はありますか?
玉置氏: 字幕の位置はかなり検証を繰り返しています。
下げたり、上げたり、あとは距離ですね。
初めての試みなのでかなり検証しています。
Taipei Game Showのバージョンでは、今の位置、結構真ん中のほうに近い位置にしたというのは、あまり下だと、目を上下に動かして交互に見ないといけなくて、目を動かすことに集中して、内容があまり頭に入ってこないというのがひとつの問題としてあります。
それに対して真ん中のほうにあると字幕だけを見ると、ひかりちゃんと向き合いながら、視界に入っている字幕をそれとなく見るという形でプレイが可能だねということを、アジアの皆さんと協議して、これだったら苦労がなく字幕が読めるねということで今回の判断になりました。

字幕を採用した理由ですけど、「サマーレッスン」はひとりの人間が本当に目の前にいるとしか思えないと思わせるというところはとにかく譲れないということが前提としてあります。
そうすると顔の表情や出してる声と口の動きは、完璧にリンクすること、シンクロすることが必要不可欠になります。
そう考えたときに口の動きのシンクロまで各言語で作るというと、その部分を日本語で作る時もかなりのコストが掛かったのですが、ほぼほぼ作り直しになるぐらいの大変さがあって、吹き替え版は今のところ現実的ではないなというところです。
だからといって日本以外の地域で出さないというわけではなくて、各地域の皆さんからも字幕でいいから、ローカライズしてひかりちゃんが何をしゃべっているがわかるようにしてほしいという要望を一杯頂いたので、それなら字幕で出して見ようというのが今回の試みになります。

――追加コンテンツを入手すると、1回のプレイ時間そのものが長くなるのですか?
玉置氏:そうですね。
VRゲームの場合は、まったく新しい体験ができることというのが第一にあります。
台湾でどういう形で出すかわからないですけど、日本のDLCの話でいうと、体験の種類や質が変わるのがDLCの中身になっています。

――それではレッスンが7日間というのは変わらないのですか?
玉置氏: そうです。
7日間の体験が1周になっていてそれは変わりません。
なぜかというと、VRゲームはぶっ通しで何十時間も遊べないので、毎日毎日気軽に遊べることを考えて1週間のレッスンになっています。
DLCでは、その1週間の中で起きるイベントを増やしたり、あと服が替えられて、違う服を着たひかりちゃんに出会えるだけで楽しめる。
自分の友達がイメージチェンジしたときのようなおもしろさがあると思っています。

「サマーレッスン」は長いドラマがあるというゲームではなくて、いつでもひかりちゃんに会えるという商品になっています。
これがうまく機能したのは、日本では多くの人が自分ひとりではなくて、友達を呼んで遊んでいるんですね。
友達にはじめて「サマーレッスン」やってもらって反応を見て、自分と違っておもしろいとか、インターネットで配信をしてる人もいて、パーティーのひとつの楽しみみたいな形でVRが使われています。
こういった楽しみ方をしている方にとって、長いストーリーがあると、友達の家に遊びに行っても途中からストーリーを見させられてよくわからないということもあると思うんですね。
1週間という区切りで何度も遊ぶ仕組みだと、短いおかげで友達に誘われてちょっと遊んでも魅力がわかるので、うまくいっているなと思っています
――印象に残ったユーザーのフィードバックは?
玉置氏: そうですね。
一番印象に残っているのは、発売する前に、「サマーレッスン」のデモをやったんですけど、デモの時に、多くのお客さんが我を忘れて遊んで、いつもは見ない色んな動きを見れて、VRって人間にこんなに影響を与えるんだということがわかった驚きが忘れられないですね。
発売後で印象に残ったフィードバックは、ひかりちゃんと一緒にレッスンを進めていって、一番成績の良いエンディングを迎えて、ひかりちゃんの喜んでいる様子とか反応を見て感動して泣いちゃったというのが、今後VRが心の癒やしだったり、芸術的な展開の予兆に見えたんですね。
VRって人の心をここまで動かせるんだというフィードバックは凄く印象に残っていて、それが今後のひとつの指針になるのかなと思いますね。

原田氏:一番ビックリしたのは、PS VRがまだ発売されていないのに、「サマーレッスン」をいくら出しても買うといった人がいることじゃない?(笑)
玉置氏:そうですね、確かにそうですね(笑)。


Category: ゲームニュースまとめ

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