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SteamVR互換機の本命!? 「LG VR Devkit」試用レポート

 【04//2017】

SteamVR互換機の本命!? 「LG VR Devkit」試用レポート


GDC 2017にて、LGエレクトロニクスが開発・製造するSteamVR互換システムを試遊することができたのでご報告しよう。


LGエレクトロニクスはサムスン電子に次ぐ韓国第2の総合家電、情報通信メーカー。
読者の皆さんには主にPC用ディスプレイの市場でおなじみとなっている企業だが、彼らは今、Valveと共同でHTC Viveに次ぐSteamVR互換システムを開発中だ。

それが今回GDC 2017に合わせてお披露目となった「LG VR Development Kit(仮称)」。
LGの説明によるとまだ正式な名称はないとのことだが、すでにVRハードウェアとして非常に優れたものに仕上がっていた。
価格・発売日等は未定だが、まずはそう遠くないうちに開発者向けのバージョンをリリースし、その上でさらに改良を加えたコンシューマーバージョンを投入していきたいとの意向だ。

■HTC Viveを超える解像度。
優れたデザインで使い勝手を大幅に向上
「LG VR Devkit」は、すでに発売中の「HTC Vive」と同じく、ヘッドセット、VRコントローラー、トラッキング装置(Lighthouse)の3点セットからなり、SteamVR(OpenVR)に対応するPC用VRシステム。
全てのコンポーネントがLG自身による製造になっているのが特徴のひとつで、特にディスプレイ部には、本製品のために製造したという解像度が1,440×1,280ドットの3.5インチOLED(有機EL)パネルが2枚使われている。

これはHTC Viveの1,080×1,200ドットをひとまわり上回る解像度となっており、画質もより鮮明だ。
パネルの画素配列はViveと同じペンタイル配列となっているため、スクリーンドアエフェクト、いわゆる網目感は存在するが、解像度が高いぶん、Viveのものに比べれば格段に良くなっている。
画素の開口率もこちらのほうがやや上ではないだろうかと感じられた。

リフレッシュレート90Hzで、インプット・トゥ・フォトンの遅延は20ms以下であるなど、解像度以外の点ではHTC Viveとほぼ同等の表示性能となっている。
OLEDパネル製造大手もであるLGは、こういったコアパーツを自社調達できるというのが他のメーカーに対する強みのひとつだ。
そのことは価格競争力の面でも有利に働くはずである。

ヘッドセットのデザインも秀逸だ。
HMDを頭部に固定するヘッドバンド部分のデザインはPlayStaion VRのものにそっくり。
後頭部のダイヤルを回してバンドを締め付けるメカニズムも同様で、こっちが心配になるくらいPS VRの使い心地に近い。
だがバイザー部のデザインは他のどのHMDにも似ていない、一歩先を行くものになっている。

それが「LG VR Devkit」のおそらく最大の特徴となる“リフトアップ機構”。
バイザー部分は側頭部の中心にヒンジでつながっており、ちょうどバイク用ヘルメットのバイザーと同じように指で開閉できる。
バイザー部分を持ち上げれば現実の視界を簡単に確保でき、ヘッドセットをつけたままでいろいろな現実の作業をこなすことができる。
すっとバイザーを下げれば即座にVRの世界へダイブイン。
HTC ViveやOculus Riftをかぶっては外して、外してはかぶってを無数に繰り返しているVRコンテンツの開発者にとって念願となる、夢のような機能だ。

全体の重量バランスもよく、HTC Viveのようなフロントヘビーな感じはない。
バイザーのハウジング部は十分なゆとりをもって設計されており、筆者のようなメガネユーザーでも問題なく装着できるなど、スキのない作りである。

また、PCとの接続インターフェイスにUSB 3.1 type Cを試用しているのも素晴らしい点だ。
映像・音声・トラッキングデータ・電力といった必要要素をこれ1本で伝送できるので、HTC Viveでは不満点となっていたケーブルまわりがこれ以上なくコンパクトかつシンプルになっている。
また、USB 3.1 Type C端子のないPCでも使えるようにするため、製品には変換用のコントロールボックスも付属するとのことである。

2本1組のVRコントローラーと、トラッキングのためのLighthouseベースステーションもLGが製造する。
VRコントローラーはViveのものとほぼおなじ機能構成だが、「ゲーム開発者のフィードバックに基づき」(LGスタッフ)、アプリケーション制御用のメニューボタンが1個追加されている。
これは従来、Viveコントローラーでメニューボタンの長押しで実現していた機能を置き換えるものになるようだ。

Lighthouseベースステーションなどトラッキングシステムまわりは、HTC Viveと同じくValveのコア技術を元にした同一仕様のハードウェアとなっている。
このため、ルームセットアップの方法や、トラッキング性能についてはHTC Viveと全く同等になるようだ。

そういったSteamVR互換機として共通の仕様も踏まえて、1段階上の解像度と使い勝手を持つ「LG VR DevKit」は、ある意味ではHTC Vive 1.5のような位置づけで市場に受けいられることになりそうだ。
特にVRコンテンツ開発者にとっては、簡単にVRとリアルを切り替えられるフリップアップ機構は喉から手が出るほど欲しいはず。
このまま順調に発売されればSteamVR互換機の本命といえる存在になるだろう。

また、偶然ではあるが今回の取材中、LGのスタッフがTobiiと接触するところに遭遇した。
Tobiiはアイトラッキングシステムのメーカーで、現在VR向けのソリューションを開発している。
スタッフによるとまだ決定はしていないとのことだが、「LG VR Devkit」の消費者版にはTobiiのアイトラッキングシステムがアドオンされる可能性も出てきた。

■ValveとHTCは別の道に進み始めるか?
「LG VR DevKit」は、SteamVRの上位互換機種としてふさわしい仕様に仕上がっている。
このことは間違いなくHTC Viveのシェアを脅かすことになる。
ライバルは他にも存在する。
今年中に各社から投入予定のWindows Holographic対応の安価なMRヘッドセット群だ。
それらがSteamVR互換モードで動作する可能性は現時点で全く否定されていない。
ますますハードの競争は激化していく。

当然そうなることは見越していたようで、HTCは「Viveport」という独自のコンテンツ配信プラットフォームを昨年9月にスタートしており、SteamがカバーしないノンゲームVRコンテンツの配信に力を入れることで、Valveと併存するコンテンツプラットフォーマーとなり、収益の軸足をハードからソフトに移そうとしているようだ。

しかし、最近ではSteamでもノンゲームアプリの配信が活発になってきており、ViveportとSteamは競合しはじめている。
つまるところ、HTCはSteamVRのエコシステムにおいてハード屋としてはLGほか各社と競合し、ソフト屋としてはValveと競合するというわけだ。

そのことは、これまで一心同体に見えたValveとHTCのパートナーシップの形を変えていくことにもつながるのではないだろうか。

この2社がここまで立ち上げて育ててきたのがSteamVRというプラットフォームであるが、そこにLGのような強力なハードメーカーが参入することでVRシステムの性能・価格競争が激化していく。
これはパソコンの世界でPC/AT互換機が世界を席巻した経緯にも似ている。
競争の結果としてより良いハードがより安価で入手できるようになり、我々ユーザーにとって大きな利益となるし、普及も加速していく。

その競争がどう転ぼうとも、Valveには利益しかない。
Valveの利益はSteamでゲームが売れることだけであって、ユーザーがどのハードを使おうが関係ないのである。
ValveはSteamVRという標準を支配することで、ハード・ソフト両面のオープンな競争をあおり、市場を活性化させ、コンテンツ配信による収益を上げることができる。

一方、HTCは、SteamVRがさらに盛り上がるほど、柱のひとつであるハード部門が激しい競争に晒され、ソフト部門ではValveそれ自体と戦うことになる。
対するLGは、各社によるSteamVR互換システムの開発競争が激化して最終製品のシェアを取れない場合があっても、HMDのコア部品であるOLEDパネルのサプライヤーとして利益を上げることができるため、競争激化は望むところ。
Windows Holographic向けの需要も含めて煽っていきたい立場だろう。
こう考えるとLGはValveに近いポジションであることがわかる。

そのような環境のなかで、HTCは単なるSteamVR互換機製造メーカーという立場に甘んじることはないだろう。
いずれかの段階で、本業であるスマートフォンの開発能力や、中国市場でのプレゼンスをを活かした戦略に注力していくのではないだろうか。
いずれにしても非常に予測しにくい。

今年、様々な互換機が登場するSteamVR。
LGという強力なハードメーカーの参入で次のステージに進むことになることは間違いない。
そういう意味でも、「LG VR Development Kit」は注目の1品である。


Category: ゲームニュースまとめ

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